松尾 光祐 院長の独自取材記事
柴﨑整形外科
(川崎市中原区/武蔵小杉駅)
最終更新日:2026/10/06
武蔵小杉駅から徒歩5分、再開発が進むエリアと昔ながらの住宅地の境目に立つ「柴﨑整形外科」。落ち着いた色味で統一された院内には穏やかな空気が流れ、午後の診療前には外に患者が並ぶこともあるという地域に根差した医院だ。2026年4月、新たな院長として松尾光祐先生が就任した。筑波大学卒業後、大学院でのリウマチ研究やアメリカ留学を経て、横浜市立大学で上肢・腫瘍チーフ、藤沢市民病院で部長職を歴任。リウマチ・腫瘍・上肢という整形外科医でも専門にする人が少ない領域を軸に研鑽を重ねてきた。「たくさんの手術を経験してきたからこそ、できるだけ手術しないで済むようにしたい」と穏やかに語る松尾院長に、整形外科医を志した原点や診療への思いを聞いた。
(取材日2026年9月18日)
リウマチや腫瘍にも詳しい、経験豊富な整形外科医
こちらのクリニックには、どのような患者さんが来院されていますか。

変形性膝関節症や腰痛、肩の痛みなどを中心に、スポーツ外傷や関節リウマチの方まで幅広く診療しています。年齢層もとても幅広くて、0歳のお子さんから高齢の方までいらっしゃいます。地域柄、昔からこの辺りにお住まいの高齢の方が多いのですが、再開発エリアの新しいマンションに住む若い世代の方もどんどん増えてきています。中高生は部活動でのケガが多いですね。高齢の方の場合は加齢に伴い筋力が落ちて、日常の動作が難しくなる方も少なくないので、当院ではリハビリにかなり力を入れています。特に高齢の方の生活動作を回復させることを大きな目標として取り組んでいます。また、柔道整復師やリハビリ助手など約20人のスタッフが在籍していることも特徴です。
幅広い患者さんを診る中で、先生ならではの専門性はどこにありますか。
リウマチ、腫瘍、上肢の3つが私の専門領域です。リウマチについては日本リウマチ学会リウマチ専門医の資格を持っており、整形外科医として診ることで関節や腱の問題にも踏み込んだ対応ができるのが強みだと思っています。腫瘍については大学時代から骨軟部腫瘍を専門にしてきました。良性か悪性かの判断には専門的な知識が必要ですし、近年はがん治療の進歩で長く生きることが望めるようになってきている分、骨への転移に対する相談も増えています。こうした領域は対応できる医師が限られるので、専門知識を持つ人間がもっと必要だと感じています。上肢については、手や肘、肩は神経や腱が複雑に入り組んでいて専門的な経験が求められる部位ですが、大学病院で珍しい症例も含めて数多く診てきた経験があります。
これまでの手術経験は、クリニックでの診療にどう生きていますか。

人工関節や手根管症候群、ばね指、脊椎、外反母趾、肩の関節鏡など、本当に幅広い分野の手術を経験してきました。その経験があるからこそ、当院ではできるだけ手術をしないで済む方法を探れますし、もし手術が必要な場合にはより適切なタイミングでお勧めすることができます。また、大きな病院で長く働いてきた分、紹介の判断にも生きると思います。当院で十分に対応できる方にはここで満足していただけるよう努めますし、逆に早めに大きな病院に送ったほうがいいケースは迅速に紹介するようにしています。大きな病院側にいた経験から、どういう状態で紹介されると患者さんにとって一番よいかがわかるので、その視点は大切にしています。
自身のケガ体験を原点に、整形外科医へ
先生が医師を志されたきっかけを教えてください。

父が工学部の研究者だったこともあり、子どもの頃から研究という仕事を身近に感じていました。まだ誰も知らないことを世界で初めて解明していくということに、漠然とではありますが憧れを持っていたんです。ただ工学にはあまり興味がなかったので、どうせ研究するなら命に関わる分野がいいだろうと考え、医学部を志望しました。周囲に医師がいなかったこともあり、当時は医師という職業への具体的なイメージは持っていなかったんですよね。でも医学部で学ぶうちに、研究よりも患者さんと直接向き合う臨床の仕事に惹かれるようになりました。もともと自分では手先が器用なほうだと感じていたこともあって、外科系の道も考え始めていた時期です。
数ある診療科の中から、整形外科を選ばれた理由を教えてください。
大学5年生の時に、アイスホッケーの部活で太ももの筋肉を断裂してしまったのがきっかけです。筑波大学のアイスホッケー部は医学部の大会で何度も優勝するような強いチームだったこともあり、どうしても大会に出たかったんですよね。必死にリハビリを重ねて、なんとか試合に出ました。その経験を通じて、命に関わらなくても日常の動作に支障が出ることがどれほど大きな負担になるか、身をもって実感したんです。そして何より、先輩の整形外科の先生に助けてもらったことがとてもありがたくて。あの経験がなければ、おそらく整形外科の道には進んでいなかったと思います。
こちらに来られるまで、どのようなご経験を積まれてきたのですか。

卒業後はまず大学院に進み、関節リウマチを中心とした研究に取り組みました。その後、アメリカのカリフォルニア大学デイビス校に3年間留学して、骨軟部腫瘍に関する研究にも携わりました。帰国してからは横浜市立大学に7年間在籍し、上肢と腫瘍の診療チーフや医局長を経験しました。続いて藤沢市民病院に整形外科の部長として9年間赴任したのですが、ここは手術件数がとても多い病院で、手術を幅広い分野で経験することができました。人工関節手術や骨折の手術なども非常に多かったですが、リウマチや腫瘍、上肢といった専門性の高い分野のキャリアを重ねてきたことが、私の特徴と言えるかもしれません。そうした経験を経て、2026年4月に当院の院長に就任しました。
患者と一緒に作り上げる医療を、かかりつけ医として
患者さんとの向き合い方で、大切にされていることはありますか。

治療は医師と患者さんが一緒に話し合って決めていくものだと考えています。ですから、まずはわかりやすく説明して、しっかり理解していただいた上で治療に参加してもらいたい。専門用語はできるだけ使わず、模型やエックス線画像なども活用しながらお話しするようにしています。もう一つ大切にしているのが、患者さんがどう思っているかをできるだけ読み取ることです。年齢や性格によって求めるものは違いますし、個人差がとても大きいので、話し方や表情を見ながら、この方にはどういう治療が合っているかを考えるようにしています。日々悩みながらではありますが、世の中にある膨大な情報の中から本当に有益な知見を選び取って、一人ひとりに合った形で届けていきたいと思っています。
今後、こちらのクリニックでどのような医療を届けていきたいですか。
大きな病院にいた頃は、手術が終わった後はかかりつけ医の先生に患者さんをお戻ししていました。今度は私自身がかかりつけ医として、手術以外の部分を最初から最後まで見守っていきたいと思っています。正直なところ、かかりつけ医としてはまだまだ経験が浅いと感じているんです。大きな病院とクリニックでは患者さんとの距離感も違いますし、学ぶべきことがまだたくさんあります。ただ、ここで日々患者さんと接する中で、患者さんから教えていただくことが本当に多いんですよね。スタッフもとても患者さん思いで、一人ひとりに丁寧に向き合ってくれていますので、この環境の中で地域の方々に信頼していただけるかかりつけ医に成長していきたいと考えています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

整形外科の病気は、一回の受診ですっかり良くなるというものばかりではありません。なかなか改善が見えないと不安に感じることもあるかと思いますが、良くならないときにはその段階に応じた対処法がありますし、次のステップへ進むこともできます。ですから、すぐに諦めてしまったり別の病院を転々としたりするよりも、まずは継続して通っていただくほうが解決に近づくことが多いんです。症状に変化があれば、その都度お伝えいただけると治療の方針もより適切なものにできると思います。最初にもお話ししましたが、医療というのは患者さんと医師が一緒に作り上げていくものだと私は考えています。どちらか一方通行では、治るものも治らないでしょう。気になることがあれば遠慮なく質問していただいて、一緒に取り組んでいけたらうれしいです。

