海津 嘉蔵 院長、海津 嘉弘 先生、海津 美穂 先生の独自取材記事
新北九州腎臓クリニック
(北九州市小倉南区/下曽根駅)
最終更新日:2026/09/15
下曽根駅より徒歩15分の場所に位置する「新北九州腎臓クリニック」は、「北九州腎臓クリニック」の分院として2016年に開院。海津嘉蔵(かいづ・かぞう)院長は、「多数治療目標達成型厳格治療」という患者の自己管理力向上をめざした外来診療の充実を目的に、透析療法だけでなく、透析に至らないためのアプローチにもチーム医療で取り組んでいる。診療は腎臓病、血液透析といった血液浄化療法、高血圧症、糖尿病および内科全般と幅広く、2026年7月には眼科診療も始まった。各専門の医師、看護師、臨床工学技士、臨床検査技師、管理栄養士などさまざまなスタッフが在籍。同院が取り組むチーム医療・横断医療とは? 優しい笑顔が印象的な嘉蔵院長、新たに加わった眼科医の海津嘉弘先生・海津美穂先生に詳しく話を聞いた。
(取材日2026年8月8日)
腎臓病と糖尿病に特化したクリニック
腎臓病と糖尿病を専門に診療するようになった経緯を教えてください。

【嘉蔵院長】2014年に北九州腎臓クリニックの前身である阿部クリニックを継承し、2016年に分院として当院を開きました。私は北九州で生まれ育ち、大学は親の勧めで日本大学医学部へ進学。そこで腎臓学の教授と出会ったことをきっかけに、この分野に興味を持ちました。大学院修了後は産業医科大学に勤務し、腎臓疾患を深く学ぶためアメリカへ2年間留学。帰国後は産業医科大学腎センター副部長、横浜中央病院副院長を務めました。腎臓病は予防から透析、移植まで段階に応じた治療がある点にも魅力を感じ、専門性を深めてきました。
腎臓病と糖尿病にはどのような関係があるのでしょうか。
【嘉蔵院長】糖尿病で血糖値の高い状態が長く続くと、腎臓の糸球体が障害され、ろ過機能が低下してたんぱく尿が出るようになります。これが糖尿病性腎症で慢性腎臓病の一つです。進行すると透析が必要になることもあるため、早期発見・早期治療が重要です。当院では日本透析医学会透析専門医の私が腎臓病を、日本糖尿病学会糖尿病専門医の海津梓奈子先生が糖尿病を、日本透析医学会透析専門医の三谷博通先生ならびに稲田良郁先生が人工透析内科を担当しています。透析を受ける患者さんだけでなく、透析に至る前の段階から診療し、できる限り腎臓病の進行を抑えることにも力を入れています。
透析予防を含め、どのような診療を大切にされていますか。

【嘉蔵院長】透析予防には慢性腎臓病の早期発見・早期治療とともに、糖尿病・高血圧症の治療も重要です。当院では医師だけでなく、看護師、臨床工学技士、臨床検査技師、管理栄養士などが、それぞれの専門性を生かして協力・協働・補完する「チーム医療」に取り組んできました。腎臓病教室や糖尿病教室などを通じて、病気について正しく知り、生活習慣の改善や治療に主体的に取り組めるよう支援しています。透析が必要になってからではなく、できるだけその前の段階から関わることを大切にしています。
「チーム医療」と「横断医療」で患者を支える外来診療
今回、眼科診療を開設された背景と、その役割を教えてください。

【嘉弘先生】父が腎臓・糖尿病を専門とする中、私は眼科を専門に九州大学の医局に所属し、さまざまな病院で臨床経験を積んできました。糖尿病は全身に影響を及ぼし、目にも合併症を起こします。特に糖尿病網膜症は初期には自覚症状がほとんどなく、症状が現れた頃には進行している場合もあります。腎臓病と糖尿病を専門とするクリニックに眼科が加われば、内科と眼科の両方から患者さんをサポートできる。そう考え、これまで培ってきた経験を地元北九州で生かしたいと思いました。
糖尿病網膜症の早期発見や適切なタイミングでの治療において大切なことは何でしょうか。
【嘉弘先生】糖尿病網膜症は、糖尿病によって網膜の血管が障害される病気です。初期には自覚症状がないことが多い一方、進行すると出血や網膜剥離を起こし、視力低下、場合によっては失明に至ることもあります。また、網膜にむくみが生じて視界の中心がゆがんで見える糖尿病黄斑浮腫などもあります。だからこそ早期発見が重要。視力や眼圧、眼底を検査したり、光干渉断層計(OCT)を用いたりして状態を確認し、必要に応じてレーザー治療や抗VEGF薬の硝子体内注射などにつなげます。糖尿病と診断されたら、眼科も受診していただきたいですね。
【美穂先生】初期の検査で問題がなくても、血糖値のコントロールが悪い方は3ヵ月ごとを目安に、また問題がない場合でも半年に1回、少なくとも年1回の検査をお勧めします。定期的に診ていれば、治療が必要になったタイミングで適切に介入でき、視力を守ることにもつながります。
眼科が加わることで、地域の患者さんにどのようなメリットがありますか。

【美穂先生】現在は院内に併設しているため、腎臓病や糖尿病で通院されている方が眼科も受診されています。来年には敷地内に眼科棟を建てる予定ですので、一般の患者さんの利便性も向上するでしょう。内科、腎臓内科、糖尿病、眼科を一つの場所で相談できることは、患者さんの負担軽減にもつながると思います。また、眼科の検査から糖尿病や高血圧症が疑われ、内科につなぐケースも考えられます。眼科から病気を見つけ、早期治療につなげられることも大きなメリットです。
【嘉蔵院長】これまでも、多職種が協力・協働して行う「チーム医療」を大切にしてきましたが、糖尿病、腎臓内科、眼科など、医師が診療科の垣根を越えて協働する「横断医療」の体制が整いました。これは当院にとって新しい一歩です。それぞれの専門家が連携し患者さんの全身状態を考えながら診療することで、より良い医療につなげていきたいですね。
自身が主治医となり病気に立ち向かうためのサポートを
院長が取り組む「多数治療目標達成型厳格治療」とは?

【嘉蔵院長】腎臓病治療は一つの病態を良くしただけ、また薬を飲んだだけで改善するものではありません。それぞれの病態に治療目標を定めて、治療目標を達成することが重要です。患者さんによって状態の程度が異なりますから、どこに力を入れて改善すべきか見極めた上で厳格に行う治療を「多数治療目標達成型厳格治療」と呼んでいます。患者さんご自身が自分の病気の主治医になれるようわれわれが支援、指導する。つまり、患者さんの自己管理力を向上させることが最大の目的です。そのために、患者さんの透析に対する不安を取り除き、安心していただくことから始めます。次に正しい知識。ご自身が腎臓病と向き合える、基本的な知識を学んでいただくことが重要です。多数治療目標達成型厳格治療を十分に行うことは、医師だけではできません。各分野のスタッフによるチーム医療が不可欠だと考えています。
患者さんと向き合う上で、大切にされていることを教えてください。
【嘉蔵院長】患者さんとの信頼関係を築き、安心して治療に取り組んでいただける環境をつくることを大切にしています。患者さん自身が病気を理解し、主体的に取り組むためには、まず不安を取り除き、正しい知識を身につけていただくことが必要です。
【美穂先生】丁寧にお話を伺い、患者さんに「来て良かった」と思っていただける診療を心がけています。症状によっては「心配しなくて大丈夫ですよ」と言えないこともありますが、そういう時こそ、現在の状態や必要な治療について丁寧に説明し、理解と納得をしていただくことが大切です。「ここなら先生が話を聞いてくれる」「ここに来れば安心」と思っていただけるような眼科にしたいですね。
最後に、今後のクリニックの展望をお聞かせください。

【嘉蔵院長】透析・糖尿病の専門家に眼科の医師が加わり、これまで以上に多角的に病気を診られる体制が整いました。この診療体制を早く確立し、地域医療に貢献できる第一歩を踏み出したいと思います。私が長年取り組んできたのは、人は腎臓病をどこまで改善できるのかを医師として確かめたい、という思いからでした。そのためにも、医師だけでなく職種、そして診療科の枠を超えて力を合わせることが必要です。患者さん自身が主治医となって病気に立ち向かえるよう、これからもそのためのサポートに徹していきます。
【嘉弘先生】糖尿病網膜症だけでなく、眼科のさまざまな病気に幅広く対応し、早期発見・早期治療につなげていきたい。眼科の受診がきっかけで糖尿病などが見つかるケースもありますので、目だけではなく全身の健康を考える入り口にもなれればと思います。これまでの経験を生かし、地域の方が適切な診断と治療を受けられるよう努めていきます。

