青柳 龍太郎 院長の独自取材記事
みずほ台ホームケアクリニック
(富士見市/みずほ台駅)
最終更新日:2026/09/14
みずほ台駅から徒歩約5分の住宅街の一角にある「みずほ台ホームケアクリニック」は、2024年4月にオープンした訪問診療専門のクリニックだ。院長・青柳龍太郎先生は、大学病院の総合診療内科部門で診療する中で「病気だけでなくその人の生活や環境、人生をも診たい」と考えたことが訪問診療に取り組むきっかけとなった。入院中の多くの患者が口にする「早く家に帰りたい」という願いをかなえ、自宅で過ごしたいけれど通院が難しい人をサポートするために開業した同院は、患者と家族一人ひとりの希望や不安に寄り添った医療を提供している。「患者さんのニーズに応え続けていきたい」と話す青柳院長に、訪問診療に取り組むことになったきっかけや患者・家族への思いを聞いた。
(取材日2026年7月28日)
病気だけでなく患者の生活や人生をも支える医療を
先生はどのような医師をめざしてこられたのでしょうか。

もともと医師を志したのは、「この病気が診たい」というより、「病気で困っている人をサポートしたい」と考えたのがきっかけでした。一般的に大学病院というところは、循環器、呼吸器など領域ごとに分かれて専門性の高い医療を行う施設です。ただ、実際に病院で患者さんを診て気づいたのが、特に高齢の方は一つの病気だけを持っているわけではなく、いくつもの病気や症状を併せ持っているということ。そういう患者さんを目の前にして「これは自分の専門だから診るけど、これは専門外だから診られない」というのでは信頼が得られないのでは、と考えたのです。信頼して任せてもらえる以上、患者さんのすべてに責任を持ち対応できる医師になりたいと考えました。
訪問診療に取り組むことになったきっかけを教えてください。
大学病院では「総合診療内科」という、病気だけでなくその人の生活なども含めて診るという方針で医療を行う部門にいました。自分の中ではずっと「病院の中で病気だけを診るのではなく、患者さんの生活に根差した医療をしたい」という思いがあったので、早くから訪問診療には興味がありました。入院中の患者さんは、皆さん口をそろえて「早く家に帰りたい」とおっしゃいます。でもご高齢であることや入院による体力低下などで、自宅で暮らすことが難しい方も少なくありません。どうにか患者さんが望むように、自宅で暮らせる体制をつくりたい。そう思ったのが訪問診療に取り組むきっかけでした。
どのような思いで開業されたのですか?

大学病院でも訪問診療に携わっていましたが、一人ひとりの患者さんの生活も含め、自分ですべてに責任を持って診療したいと思い、訪問診療専門のクリニックを開業しました。それまでは病院でのほかの業務とかけ持ちでしたし、夜間コールなどはほかの先生に対応してもらうこともありました。しかし、今は訪問診療だけを専門に行い、24時間365日すべて私が対応しています。
オーダーメイドの診療で患者と家族に寄り添う
患者さんはどのような方が多いのでしょうか。

訪問診療を行うのは、自宅で過ごしたい方、通院が困難な方が主な患者さんです。がん終末期の方、認知症の方、脳卒中の後遺症がある方、呼吸不全や心不全で自宅療養されている方、腎臓が悪くて透析をされている方、胃ろうや点滴で栄養を取っている方など、疾患や症状は多様です。患者さんの希望や大事にされていることも十人十色ですので、診療の内容もそれぞれに応じたオーダーメイドです。最初に行う面談には私も参加し、患者さんやご家族の考えや希望を直接お聞きしています。顔を合わせて「こういう医師が来ますよ」とわかることで安心していただけるとも思いますので、そこはこだわっています。
ほかに、訪問診療をする上で大事にしていることはありますか?
患者さんやご家族がどのような生活を希望しているのかをしっかりお聞きすることです。例えば、患者さんが体調を崩したとき、自宅での治療を優先したい方と、一度入院して治療を受け、回復してから自宅に戻りたい方では必要な対応が異なります。せっかく自宅で暮らせるのですから、患者さんやご家族のニーズに沿った医療を行えるように、確認することは常に意識しています。また、患者さんの自宅での様子がわかることが、訪問診療の強みの一つ。例えば、「ちゃんと薬は飲めている」とおっしゃっていた方が、自宅に行ったらほとんど飲めておらず薬が山積みだったということもあります。生活の様子を把握することで、治療の内容や方向性を調整できることも診療の重要なポイントになると思います。
ご家族のサポートにも力を入れているとお聞きしました。

訪問診療では、患者さんはもちろん、ご家族に会いに行くことも大事な目的です。ご家族に対しては、介護の負担が大きくなりすぎていないか、常に気を配り、声をかけることを心がけています。ご家族の負担軽減には医療の力だけでは難しく、訪問看護職や介護職のスタッフ、ケアマネジャーさんなどと連携してサポートしています。「患者さんだけでなくご家族の負担を軽くすることも私たちの役目なんですよ」ということはご家族にしっかりお伝えしていますし、定期的に医師が訪問することでご家族の安心につながっていると感じています。
治療選択にあたり、患者さんとご家族の意見が異なるときはどうしていますか?
医師としては「患者さん本人の意志を尊重する」ことが原則ですが、なかなかそのとおりにいかないことも多いですね。患者さん、ご家族それぞれの立場になって、とよく言われますが、やはりまったく同じ立場になることは難しく、そうなるとできることは、医師としての経験や知見をお伝えすることしかありません。例えば、「今はないけれど、今後はこういう症状、痛みなどが出るかもしれません」「こういう場合はこういう過ごし方がありますよ」と、今後の症状や治療の見通しなど、患者さんやご家族が判断するための材料をなるべく多く、なるべく具体的に提供する。そして「同じような方では、こういうこともありました」「こうした場合、こんな問題が起こったこともありました」など、良いことも悪いこともお伝えし、現実味を持って患者さんやご家族が想像できる手助けをし、一緒に考え選択していくことを心がけています。
積極的な情報共有で訪問看護・介護とも連携
開業後、「大変だったけれど印象に残っている」というご経験を教えてください。

高齢で独居のがん終末期の患者さんで、どうしても最後まで家で過ごしたいとおっしゃる方がいました。やはりサポートするご家族がいない場合、痛みが出てきたり、動くことが難しくなったりすると、最後まで家で、特にご本人の尊厳を保ったまま生活することは難しくなりますが、ご本人の希望はかなえたいと考えました。もちろん医療の力だけでは難しいので、ケアマネジャーさんを中心に多職種で密に連携し最後まで自宅で過ごしていただきました。同じくがんで痛みが強く動くのも難しい状態で、遠くにある実家に帰りたいとおっしゃった方もいました。さすがにその地域まで私が訪問することはできないので、どうしたらいいか試行錯誤し、ご実家のすぐそばの総合病院で診療してくれる医師を探しておつなぎしたこともありましたね。
訪問診療には看護・介護との連携が欠かせないのですね。
本当にそのとおりです。病院から紹介される患者さんについては、退院前に医療者やケアマネジャー、訪問看護職・介護職のスタッフなどと帰宅後の治療やケアの方針を話し合うカンファレンスが行われますが、そこには私もできる限り参加するようにしています。また、訪問看護職・介護職の方々とはアプリで日常的に患者さんの情報共有をしています。こちらからも医学的な情報は積極的に提供しますが、例えば「食事をするときに箸を運ぶ速さが変わった」「歩くときの様子がちょっと変わった」など、患者さんの生活上の様子については圧倒的に介護や看護の方からいただく情報量のほうが多く、ご家族からの情報と同じぐらい貴重なものと考えています。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

これからも一人ひとりの患者さんのニーズに応えられる医療を追求し、責任を持って患者さんとご家族を診ていきたいです。そうすることでこの地域の医療を支えていけたらと考えています。例えば「訪問診療は難しいのではないか」「ほかの施設では訪問診療はできないと言われた」という症例についても、ぜひご相談いただければと思います。信頼していただいたからには、その方が家で過ごすための最善の治療を考え、ご希望に沿った医療を提供できるよう全力で取り組んでいきます。

