池谷 敏郎 院長の独自取材記事
池谷医院
(あきる野市/秋川駅)
最終更新日:2026/10/09
東京都の西部、秋川渓谷がある自然豊かな場所に「池谷医院」はある。院長の池谷敏郎先生は、検査結果に並ぶ数字だけではなく、その人が何を食べ、どういう毎日を送っているのかにまで目を向ける。「当院は堅苦しくないんです」と話す池谷院長は、患者と犬の話や近所の店の話題に花を咲かせたり、パソコン画面で患者と衛星地図を見ながら、散歩コースを考えることもあるそう。検査結果をどう患者の生活に落とし込むか考え、無理なく続けられる治療が池谷院長のこだわりだ。近年さらに追究しているのが、栄養学と生活習慣の改善を重視し、薬に頼りすぎない医療。その思いは診察室を越え、国内だけでなく海外へも広がっている。一人の患者と向き合う外来から、海を越えて届く健康情報まで池谷先生が描く医療の現在と、その先にある未来を聞いた。
(取材日2026年9月10日)
栄養と生活習慣から血管を見つめる
こちらにはどのような患者さんが多く来院されていますか。

生活習慣病や動脈硬化が気になる方のほか、「コレステロール値が高いと言われたけれど、本当に薬を飲まなければいけないのか」「薬を処方されているけれど、できれば飲みたくない」と相談に来られる方も多いですね。慢性的な痛みやしびれがあり検査したけれど、異常なしと診断され、困って僕のところに来る方も少なくありません。一方で、発熱や腹痛など急な症状がある方も、できる限り診るようにしています。海外から来られる方も増えていて、アメリカ在住の中国人の方が、僕の診察を受けるために東京まで来てくださったこともありました。基本的には予約制ですが、せっかく足を運んでくださった方には、できる限り診療したいと思っています。
近年は栄養学を重視されているそうですね。
はい。最近は栄養バランスや腸内環境についての話を、よく患者さんにしています。例えば悪玉コレステロールに対しては、これまで薬による対応が中心でした。しかし今は、中性脂肪を下げて善玉コレステロールを増やすことで、悪玉コレステロールの質を変えていこうという方針を採用しています。悪玉コレステロールの量は減っていなくても、質が変わると動脈硬化などの抑制につながるからです。中性脂肪と善玉コレステロールは糖の摂取を減らしたり、運動したりすることで改善をめざします。いくら薬で対処しても、生活習慣が変わらなければ、なかなか治療がスムーズに進まないこともあります。それならば、結果が見えやすい、中性脂肪と善玉コレステロールの改善に向けて取り組んでもらうのが良いと思ったのです。頸動脈エコー検査などを行い、それでも動脈硬化の抑制が見込めない場合は、薬を使った治療を行っています。
先生が掲げる「薬に頼りすぎない医療」とはどういったことでしょうか。

薬を使わないことが目的ではありません。まず食事や運動などの生活習慣を改善して、検査データや血管の状態がどこまで変わるかを見ます。それで問題がなければ、薬を使わずに経過を見るという選択肢もありますし、難しい場合は薬を使います。また、すでに心臓の病気などを起こした方については、ガイドラインに沿って薬を使い、しっかり管理することが必要です。「薬を飲みたくない」という患者さんの希望だけで決めるのではなく、その方の生活や健康上のリスクを見ながら、生活習慣の改善と薬を適切に組み合わせていくことが大切だと考えています。
検査結果と日々の暮らしをつなぐ患者ごとの医療を
診療する上で、先生が特に大切にしていることを教えてください。

検査値だけで治療を決めないことです。数値は判断材料の一つに過ぎません。同じコレステロール値でも、年齢や性別、遺伝的な背景、喫煙歴、これまでに心臓や血管の病気を起こしたことがあるかによって、考えるべきリスクは異なります。さらに、食事や運動、仕事、睡眠など、普段どのように暮らしているのかを細かく伺い、実際の血管の状態も確かめた上で治療方針を選びます。大切なのは、一般論を伝えて終わるのではなく、その人が明日から何をすればよいのかまで具体的に落とし込むことです。それが本当の意味でのオーダーメイド医療なのではないかと思っています。
患者さんへの説明では、どのようなことを心がけていますか。
検査をして「異常はありません」と伝えるだけでは、その方の悩みは解決しないことがあります。例えば、検査では異常が見られないけど、足の冷えやしびれが気になる患者さんであれば、なぜそう感じるのか、どう付き合えばいいのか、生活の中で何ができるのかまで説明します。症状を消すことだけに意識を向けるのではなく、時にはその症状とどう付き合っていくかという考え方も必要です。その方がやるべきことや考え方、選択肢を提示するという意味では、僕の外来は検査結果と患者さんの状態の通訳のようなものかもしれませんね。難しい話も例え話を使いながらかみ砕いて伝え、患者さん自身が納得して次の行動を選べるようにすることを大切にしています。
生活習慣を変えてもらうために、どのような工夫をされていますか。

まず、その方が普段どんな生活をしているのかを細かく聞きます。最初はなかなかお話に出てこなくても、2度、3度と伺っていくうちに、おやつのことや夜の習慣など、少しずつ普段の生活が見えてくるものなんです。また、血液検査のデータと実際の食生活を照らし合わせることもします。油は取っていないと患者さんが認識されていても、よく聞くと健康のためにナッツをたくさん食べすぎていた、ということもあり得ます。こうした油も、取りすぎには注意が必要です。また、時には患者さんにとって耳の痛いこともお伝えします。ご自身の状況を理解できなければ、行動変容につながらないからです。僕自身、今も時々24時間血糖値を測定しながら食生活を見直しています。毎朝の野菜ジュースの適切な量や、玄米食についてデータを取りながら検証しているんです。医学的な知識だけで決めつけず、自分でも試すことで、患者さんが話を聞いてくれるのだと思っています。
診察室の外にも健康づくりを届け、さらに新しい医療へ
海外へも情報発信されていると伺いました。

そうなんです。今度、タイの放送局で、僕が考案した健康体操などを放送する予定です。台湾でも、現地の映像配信会社によるオンライン講座の話が進んでいます。内容は血管の話から糖質、血圧、内臓脂肪、食事、運動、入浴、睡眠まで幅広く、生活の中でどう実践するかまで具体的に伝えるものです。生活習慣病や動脈硬化が気になる40歳以上の人はもちろん、美容のために健康を追求する若い世代にも喜んでいただけると思います。これまでの著書も中国語や韓国語などに翻訳され外国の方に読まれています。外来にも外国の患者さんが増えていて、自分が発信してきた情報がSNSを通じて思いがけないところまで届いていることを実感しています。
診療だけでなく、広く健康情報を発信する理由を教えてください。
外来で直接お話しできる人数には限りがありますから、健康づくりの情報を発信し、多くの方に届けることは大事だと思っています。最近も、僕が30年実践してきたことを、詳細にまとめて書籍化しました。何を隠そう、僕は30代の頃、メタボ体型だったんです。これでは循環器内科の医師として説得力がないと思い、血管ケアに取り組んできました。患者さんには僕が試したアプローチなどをお伝えしているので、それらも一部本で紹介しています。外来の患者さんはもちろん、診察室の外にいる方々にも良くなってもらいたい。そんな思いで発信しています。
最後に、今後の展望や患者さんへのメッセージをお願いします。

息子が医師として研鑽を重ねていますので、いずれ当院を引き継ぎながら、僕自身はもっと栄養学を極めていきたいと思っています。食事や運動、腸内環境などにも広く目を向け、病気だけを見るのではなく、その人の生き方から健康を考えるような外来をやってみたいですね。僕のところで生活習慣の改善に取り組むことで、外見の若返りも楽しんでもらえればと思います。生活習慣の改善を続けるには、検査値の改善だけでなく、そうした喜びも大切です。健康武勇伝はいつでも募集中です。思う存分に僕に自慢していただけるようにサポートさせていただきます。

