清水 秀治 院長の独自取材記事
清水医院
(川口市/西川口駅)
最終更新日:2026/09/14
西川口駅からバスで約10分、川口市の住宅街にある「清水医院」は、曽祖父の代から4代にわたり地域に根差して診療してきたクリニックだ。院長の清水秀治先生は、大学病院で循環器の臨床に携わり、その後は肝臓の領域へと専門を広げ、現在も非常勤講師として活躍している。約10年前に父からクリニックを引き継ぎ、現在は腎臓を専門とする妻とともに内科・小児科の診療にあたっている。「自分の専門分野だけにこだわることはしません。気軽に何でも相談される医師でいたい」と穏やかな口調で信念を語るが、その土台には多領域にわたる豊富な臨床経験がある。生活習慣病の管理を軸に、何げない会話から隠れた疾患の兆候も見逃さないホームドクターとしての姿勢、そして川口市医師会や校医の活動を通して地域医療を支える意気込みを聞いた。
(取材日2026年7月30日)
循環器から肝臓まで。4代続く地域の医院を受け継いで
まずは、こちらのクリニックの成り立ちについて教えてください。

当院は曽祖父の代から続いていて、私で4代目になります。もともと鳩ヶ谷で診療を始めて、父が現在の地に移転しました。父と私で45年以上この場所で診療してきたことになります。曽祖父の時代には馬に乗って往診に出向いていたと聞いていますから、地域との歩みはずいぶん長いものになります。私自身は大学卒業後、大学病院で勤務してきました。年数を重ねるにつれて、大きな組織の中で仕事をするよりも、毎日患者さんと直接向き合い、一人ひとりを自ら責任を持って診たいと思うようになりました。それからは、父と私で担当する曜日を分けて、ここで診療にあたり、約10年前に正式に院長職を引き継いだという経緯です。
先生はどのような分野を専門に歩んでこられたのですか?
大学卒業後、大学病院の医局に入局しました。当時は今のように臓器別に細かく分かれていませんでしたので、循環器も肝臓も幅広く診る体制でした。最初の派遣先では循環器の医長として、カテーテル治療などにも携わりました。その後、教授が交代したのを機に肝臓の領域へ進み、大学で肝臓内科の講師を務めました。現在も週1回、大学病院に出向いて消化器肝臓の外来を担当しています。循環器を担当していた頃は、専門外の患者さんが入院してきても責任を持って診るようにと言われる時代でした。しかし、専門分野の枠を超えて全身を診る力は、まさにその時代に鍛えられたものだと感じています。
診療体制や検査機器について教えてください。

私が循環器・消化器・肝臓を中心とした内科全般を担当し、妻も医師として当院で診療にあたっています。妻の専門は腎臓で、糖尿病性腎症などによる透析を避けるために、早期に治療に取り組むようにしています。同じ患者さんでも私と妻では着目するポイントが違うこともあり、多角的に診られるのは当院の強みです。検査機器としては、心臓・頸動脈・腹部の超音波検査装置のほか、胃内視鏡、心電計、血管の詰まりを調べるABI検査装置、AI画像診断支援システムなどを備えています。CTが必要な場合は外部の検査機関に撮影を依頼し、画像と所見を受け取って私自身が診断をつけます。紹介が必要な際にも、きちんと診断をつけてお送りすることを心がけています。
全身を診るからこそ、見つかる病気がある
日々の診療ではどのようなことを大切にされていますか?

めざしているのは、何でも気軽に相談できるホームドクターです。「こんなこと聞いていいのかな」と遠慮される方もいますが、ちょっとしたことでも何でも話してほしいとお伝えしています。患者さんからの何げない一言が、病気を見逃さないための大切なヒントになり得ます。自分の専門分野だけを診る診療はしたくないんです。一つの分野だけを見ていると、見落としが出てきます。糖尿病で通っている方に胃がんが見つかることもあるわけですから。日本人の死因の約2割はがん、もう2割は脳血管疾患と心疾患、そして1割が肺炎で、合わせると5割になります。その5割をまずは見逃さないように心がけ、常に全身を意識しながら診療にあたることを大切にしています。
印象に残っている診療エピソードはありますか?
勤務医時代に糖尿病で通院中の患者さんとの何げない会話から、他の病気のきっかけをつかんだケースがあります。お父さんも叔父さんも突然亡くなっていて、ご家族にも糖尿病が多いという話が出たんです。糖尿病が進むと神経障害によって胸の痛みを感じにくくなることがあるのですが、症状がないまま心臓の血管が傷んでいる「無症候性の心筋虚血」が頭に浮かび、疑いました。CT検査を行うと血管に深刻な異常が見つかり、結果的にバイパス手術につながったんです。糖尿病だけを診ていたら気づけなかったと思います。ほかにも、生活習慣病の方の肝機能の変化に気づいて超音波検査で確認したところ、脂肪肝から肝臓がんの発見につながったケースもあります。全身を診ているからこそ拾える変化があるので、こうしたサインを見つけていきたいと常に思っています。
健康診断や検診についてのスタンスを教えてください。

通院中の患者さんには、市の健康診断やがん検診を積極的に受けるようお話ししています。会社で健診を受けている方には、結果をしまい込まずに、私と一緒に見ましょう、持ってきてくださいと伝えていて、一緒に内容を確認するようにしています。結果はスキャンして保管しているので、いつどんな検査を受けたか時系列で把握できるようにします。例えばコレステロールが高いと指摘されて来られた方でも、よく見ると血糖値もやや高かったり肥満の傾向があったりすることがあります。一つの数値だけに注目するのではなく、食事や生活習慣も含めて全体を見た上で改善策を一緒に考えることが大切なんです。便潜血が陽性であれば大腸内視鏡検査のために連携先をご紹介するなど、自分で対応する部分と専門の医療機関に任せる部分をしっかり見極めるようにしています。
体も心も、気軽に頼れるかかりつけ医
患者さんとの接し方で心がけていることはありますか?

一番大切にしているのは、患者さんが話しやすい雰囲気をつくることです。こちらが忙しそうにしていると、患者さんは言いたいことを飲み込んでしまいます。「実はね」と切り出してもらえる空気づくりを心がけています。何げない言葉の中に診療のヒントが隠れていることも少なくないんです。世間話をカルテにメモして、次の来院時に話題にすることもありますね。ちょっとした雑談も、積み重ねるうちに信頼関係につながるものなので、患者さんから自然と体の変化を教えてくれるようになるでしょう。けがをして「どこに行けばいいかわからなくて」と来られる方や、気分の落ち込みを相談される方にも柔軟に対応しています。「医者は病気を治せなくても心を癒やすことはできる」という言葉に感銘を受けたことがあり、体だけでなく心にも目を向けることが医療の大切な役割だと考えています。
クリニックでの診療に加え、地域での活動もされているそうですね?
川口市医師会の活動に力を入れていて、学術講演会を開催するなどの仕事を担当しています。それに加えて、中学校の校医や介護保険の審査委員も引き受けていますので、休診日もほとんど地域の仕事で埋まっている状況ですね。こうした公的な仕事は引き受け手が少なくなってきている現実があるのですが、好きだからこそ続けられているんだと思います。日々の診療でも地域での活動でも、根っこにあるのは一人ひとりの患者さんに責任を持って向き合いたい、地域の皆さんを支えたいという気持ちです。診察室の中だけでなく、地域全体の健康にも責任を持つ姿勢こそが、この場所で長く医療を続けてきたクリニックの理念だと考えています。
最後に、地域の皆さんへメッセージをお願いします。

困ったことがあれば、何でも気軽に相談してください。来ていただいて、大丈夫であれば「薬はいらないよ」で終わることもあるかもしれません。でも、一人で悩んでいたらずっとそのままですから、まずは聞いたほうが早い。何でもなければそれでいい。安心して帰ってもらえたら、それが一番だと思っています。気軽に足を運んでもらえることで、思いがけず病気を早い段階で見つけられることもあるでしょう。受診のハードルはできるだけ低くしておきたい。体のこと、心のこと、「こんなことで」と思うような小さなことでも構いません。まず気になったときに声をかけてもらえればうれしいです。

