井本 千秋 院長の独自取材記事
井本医院
(川口市/鳩ヶ谷駅)
最終更新日:2026/09/07
天神橋のほど近く、ピンク色の建物が目印の「井本医院」は、清潔感と温かさが同居する、昭和の雰囲気漂う昔ながらの医院だ。1964年の開業以来、地域住民の健康を支え続け、世代を超えて家族ぐるみで訪れる患者も多いという。スタッフの勤続年数も長く、30年以上のベテランが在籍。オンライン診療などの新しい取り組みも、スタッフ全員の話し合いから生まれたという。現在院長を務めるのは、初代院長の娘である井本千秋先生だ。明るくはきはきとした口調で「医師は天職」と語る井本院長に、話を聞いた。
(取材日2022年10月18日/再取材日2026年8月6日)
患者に寄り添い、元気づけられる医師になりたい
これまでの歩みをお聞かせください。

地域の方に頼りにされる初代院長の父の姿を見て、尊敬から医師の道を志しました。ところが大学生の時に潰瘍性大腸炎を患い、ひどい下痢や下血、貧血に悩まされ、入退院を繰り返しました。医師になってからも仕事がままならず、医局2年目に大腸を全摘出。時を同じくして父が同じ病院に入院し、そのまま帰らぬ人になりました。ちょうど当院を建て替え、将来的に一緒にやっていこうと話していた矢先でとてもショックでした。その後院長に就任しましたが、医師としては駆け出しの身。勤務医の先生方に診療をお任せし、医局で臨床経験を積む日々でした。病気で同期の仲間から立ち遅れて悩む私に、先輩医師が「他の医師にないスキルを身につけてはどうか」と勧めてくださったのが、超音波検査と婦人科検査でした。超音波室に入り浸り、ひたすら技術を学びましたね。その後院長として当院での診療に専念し、今に至ります。
ご自身も患者としてつらい時期があったのですね。
大腸摘出後は数回腸閉塞になりましたし、帝王切開や胆石摘出をはじめ、変形性股関節症や白内障など、何度も手術を経験しました。患者という立場も知っているからこそ、検査から術後のことまで話せるようになったと思います。それに、私の息子も入院した経験があり、さまざまな内科的治療を受けても改善しなかったので、本人の希望で手術を受けました。今は元気に社会人になっていますが、つらい症状に苦しむ姿を見て、当時は「できることなら代わってあげたい」と身を切られる思いでした。ですので、患者さんのご家族の心の痛みや苦しみを理解し、寄り添える医師でありたいと強く思います。
日々の診療で心がけていることはありますか?

医療の根本だと思いますが、きちんと患者さんの顔を見て話すことや、聴診や触診、血圧を測るといった基本的なことを大切にしています。私は患者さんと話すのが大好きで、検査結果もただ結果をお渡しするだけではなく、120%伝えたいという気持ちで数値や画像を用いて説明します。また、患者さんが話しやすく前向きな気持ちになれるよう、私自身が明るく元気で親しみやすい雰囲気でいるよう心がけています。きちんとお化粧し、白衣ではなくその日の気分で選んだ色の診察着を着ますし、院内には自作のアートフラワーを飾っています。健康の悩みだけでなく、愚痴もこぼしてすっきりして帰られる方もおられます。「先生に会うだけで元気になる」なんて患者さんに言っていただけたら本望ですね。
疾患の早期発見・早期治療のため、検査に注力
診療で力を入れていることはありますか?

健康診断や検診です。当院では、川口市の特定健診の他、大腸がんや肺がん、子宮頸がんの検診も実施しています。川口市は検診にとても力を入れていて、例えば自治体の補助による子宮頸がん検診は5年ごとなどが多いのですが、川口市は20歳以上なら、少ない負担で毎年の受検が可能です。2人に1人はがんになる時代といわれる一方、医療の発達により、早期発見すれば治療できるがんも増えています。生活習慣病なども含め、あらゆる病気に早期発見・早期治療は欠かせません。近年は世の中が豊かになり、糖尿病や肥満、脂質異常症の方が増えてきたと感じます。高血圧は頭痛やめまいなどの自覚症状がありますが、糖尿病は口が乾く程度なので、知らないうちに腎機能が低下して人工透析になることもあります。ぜひ健康診断や検診を受けていただきたいです。
技術を磨いてこられた超音波検査についてお聞かせください。
当院では頸部・腹部・下腹部の検査が可能です。腹部や下腹部の検査では、膵臓がんや膀胱がん、子宮筋腫や卵巣嚢胞などの婦人科疾患を発見することもあります。頸部の検査では、甲状腺の腫れや頸動脈を診察し、動脈硬化やプラーク・血栓の検査もできます。超音波検査は、被ばくはなく、患者さんは横たわっているだけで済むという利点があります。今年新しく導入した超音波は脂肪肝の度合いや肝硬変の程度が数値化され、重症度が詳しくわかるようになりました。数値でこのくらい、と表示されると患者さんご自身の治療に対するモチベーションも変わってくると思いますし、診断に際してもすぐに病状に適した治療が開始できるので、メリットは大きいのではないでしょうか。また胸部エックス線もデジタル化しました。高性能AIも搭載していて、ダブルチェックに活用しています。
帯状疱疹や子宮頸がんのワクチンについてもお聞かせください。

川口市では50歳以上の方に帯状疱疹ワクチンの補助があります。帯状疱疹は症状が強い方はとても痛みがひどく、長期にわたる疼痛などの精神疾患につながることもあります。ワクチンを用いることで、予防または症状が軽く済むことが期待できますのでお勧めです。子宮頸がんワクチンは、海外では10歳前に打つ方が多いのですが、日本では15歳までに接種することが推奨されています。ワクチンで防ぐことが期待できるがんなので、ぜひご相談ください。加えて定期検診も受けていただけると、より良いですね。
自分では気づきにくい睡眠時無呼吸症候群の診療も開始
最近、睡眠障害内科を開設されたそうですね。

はい。今までは近隣の医療機関に検査をお願いしていましたが、患者さんの負担を少しでも減らしたいと思い、当院でも対応できる体制を整えました。現在は、ご自宅で使用できる検査機器を活用し、普段に近い環境で睡眠時無呼吸症候群の検査を受けていただくことが可能です。実際に検査や治療を始める患者さんも増えています。睡眠時無呼吸症候群は、いびきだけでなく日中の強い眠気や集中力の低下につながることがあります。また、高血圧などの生活習慣病との関連もありますから、気になる症状がある方は早めに相談していただきたいですね。ご本人はもちろん、ご家族にいびきを指摘された方や十分に睡眠を取っているのに疲れが取れないという方も、一度検査を受けることをお勧めします。
導入されているオンライン診療はどのような方に向いていますか。
仕事や子育てでなかなか受診時間を確保できない方はもちろん、ご高齢の方や足元に不安のある方、ご家族の送迎や介助が必要な方にとっても有用な選択肢だと思います。私がオンライン診療を活用しているのは、単に利便性を高めるためではなく、通院が難しい方とも継続的につながり、お顔を見ながら体調を確認したり、お話を伺ったりできることに大きな意義を感じているからです。実際、画面越しでも顔色や表情、話し方から体調の変化に気づくことがありますし、患者さん自身が現在の状態を直接伝えてくださることで安心にもつながります。ただし、私はオンライン診療だけで完結する医療が理想だとは考えていません。高血圧や糖尿病などの慢性疾患では、定期的な検査や診察も必要です。来院とオンライン診療を組み合わせることで、通院の負担を軽減しながら患者さんとのつながりを維持し、継続的に健康状態を見守っていければと考えて導入しています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

早期発見・早期治療のため、年1回は健康診断や各種検診を受けてください。病気を恐れるよりも、今は良い治療法がありますから、発見できたら治療するぞ、という前向きな気持ちで受診いただければうれしいです。不安や悩みがあれば、どんなことでも気軽にご相談ください。長年、地元医師会の理事を務めたことで、各診療科や各分野を専門とする医師とのつながりができました。開業医の鉄則は、自分の手に負えない疾患は決して抱え込まないことだと思っています。必要に応じて適した紹介先を選択しますし、患者さんも不安だと思いますので、どのような先生かを事前にお伝えします。「こんなこと相談して大丈夫?」と尻込みせず、まずは話を聞かせてくださいね。

