高橋 公一 院長の独自取材記事
みさと中央クリニック
(三郷市/三郷中央駅)
最終更新日:2026/09/11
外来と訪問診療を2本柱に、三郷市近郊の地域医療に貢献し続けている「みさと中央クリニック」。外来診療では広く患者を受け入れ、苦痛の少ない感染症検査や内視鏡検査を実施するなど、受診のハードルを下げるべく工夫を凝らす。一方、訪問診療では、胃ろうなど医療依存度の高い患者に対しても積極的にサポートを行っている。患者のニーズを先読みし、今なお進化を続ける同院。その根底にあるのは、高橋公一院長の「三郷で暮らす人たちを支え続けたい」という想いであり、より一層の地域貢献をめざして2024年にクリニックを移転した。まるでカフェや庭園を思わせるような院内で、高橋院長に話を聞いた。
(取材日2026年7月7日)
患者と時代のニーズを捉え、進化し続けるクリニック
2024年に移転されたそうですね。なぜ移転されたのですか?

当院の開業は2008年、三郷中央駅前にあるクリニックを引き継いだのが始まりです。患者さんが増えたため予約システムなどの医療DX化も急速に進み、そうした変化が移転を考えるきっかけになりました。例えば、内視鏡やCTなどの各種検査を専用個室で受けられる設備を整えたり、駐車場を拡充させたことで、患者さんであふれる待合ではなく、診察の順番が来るまでご自宅や駐車場で待ちやすいシステムを用意しました。それが患者さんと時代のニーズなのだと考えたのです。移転前も今も、外来と訪問診療が2本柱である点は変わりません。
外来の診療体制や検査設備について教えてください。
総合診療科、循環器内科、消化器外科、血管外科、腫瘍内科と、それぞれ専門知識を持つ医師が在籍しており、幅広い症状に対応しています。またインフルエンザの検査や内視鏡検査は「痛み」も受診のハードルになりますから、インフルエンザの検査については、専用カメラで撮影した咽頭画像と問診情報等をもとにAIが解析して判定を補助する、患者さんの痛みが少ないインフルエンザ検査機器を導入しました。その他、胃と大腸の内視鏡検査については同日検査も可能です。さらに超音波やCT検査も受診当日に受けられますし、睡眠時無呼吸症候群や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の早期発見のための検査にも注力しています。女性の医師が在籍していることは、おなかや肛門の症状にお悩みの女性の方にとって、安心材料の一つになるのではないでしょうか。女性技師による乳がん検査も行っています。
認知症の相談もできると伺いました。

この近辺は若いファミリー層が増えていますが、三郷市全体で見るとご高齢の方も多くお住まいです。ご自身で思いあたる節があって認知症の検査を希望する方もいらっしゃいますし、ご家族から相談を受けることも多いですね。認知症診断には丁寧な問診と脳のCT検査による鑑別、疾患の確認を行います。病気そのものに対する薬の処方だけでなく、減薬や薬の一包化で介護する方の負担を少しでも軽減するための「介護者保護」を考えた処方の提案もしています。
「その人らしさ」を尊重して患者の人生に寄り添う
もう一つの柱である「訪問診療」では、どのような症状を診てもらえるのですか?

年齢に関わらず、ご自宅や施設で医療を必要としている方に対して、24時間365日体制で診療を行っています。消化器外科、心臓外科、腫瘍内科、小児科、形成外科など、こちらも専門知識を持ち寄って幅広い症状に対応しています。感染症検査や採血はもちろん、心電図検査もできますし、持ち運びのできる超音波検査やエックス線検査用の機器も備えていたり、内視鏡を使用しての胃ろう交換も可能です。また気管切開チューブや尿道バルーンの管理・交換、床ずれの治療、胸水・腹水の穿刺なども行っています。埼玉県では三郷市をはじめ吉川市、八潮市、松伏町、草加市、川口市、越谷市、さいたま市、蓮田市。千葉県では松戸市、流山市、野田市、柏市。東京都の足立区、葛飾区も訪問エリアとしています。
どのような方が訪問診療を利用しているのですか?
私たちは高齢者だけでなく小児の訪問診療も行っています。ご自宅や有料老人ホーム、特別養護老人ホームだけでなく、介護老人保健施設にも伺っています。小児では、医療的ケアが必要なお子さんたちの胃ろうや気管切開チューブの交換はもちろんのこと、年齢に応じた予防接種も患者さんのご自宅で行っています。一方で、そういったお子さんたちは、16歳を過ぎ、小児科から大人の診療へと転科する移行期を迎えます。その際にも私たちは同様に往診にて対応しています。また、障害者グループホームへの往診も積極的に行っており、患者さんとご家族が安心してこの地域で暮らせるように、私たちが支えの一つになりたいと思っています。
先生はなぜ「訪問診療」に力を入れるようになったのですか?

きっかけは、胃ろう交換の患者さんへの対応でした。施設に入居されている方の場合、病院へ移動し、長時間待って処置を受け、それだけで半日から1日がかりになることもあります。それならば私たちが施設やご自宅へ伺ったほうが、患者さんや施設職員の負担を減らせるのではないかと考えました。実際に訪問診療を始めると、認知症の患者さんや、食事を取ることが難しくなった高齢の方などと接する機会が増えました。その中で「どうすればその人らしく過ごせるか」「どうすれば住み慣れた場所で最期まで暮らせるか」を突き詰めるようになったのです。それは私が医師を志した原点とも重なります。在宅医療に携わる中で、最期の瞬間までその人らしく生きられるよう支えることこそ、自分がめざしてきた医療なのだと改めて感じています。
地域の中で「通うのが楽しみになる場所」でありたい
医師を志した原点についてお聞かせいただけますか。

一つ目は祖父の存在です。祖父は、地域の教育や行政に携わり、地元の発展に尽力してきた人物でした。しかし晩年は認知症を患い、精神病院で最期を迎えました。介護保険制度が整っていない時代の話です。私は精神病院で祖父と2人きりの部屋でお見舞いをした際に、「こういう人が精神病院で最期を迎えることがなくなるようにするにはどうしたらよいのか」と考えるようになり、医師になると決意しました。もう一つは数年前に亡くした父の存在です。父は病気で「もう長くない」と悟ってから、母に「そばにいてほしい」と言うようになりました。高齢の母が毎日付き添うのは容易ではないことは父も理解していましたが、それは父の最後の愛の告白だったのだと理解しました。残された私たちは今も時折「父らしさ」として思い出し、母はうれしそうに父の思い出話をするのです。このことが、在宅医療に携わる医師としての使命を課せられた瞬間であったと思っています。
こちらでは、医療関係者の皆さんとの交流会も開催されていると伺いました。
地域医療は医師だけで成り立つものではありません。看護師や薬剤師、ケアマネジャー、訪問看護師など、多くの専門職が連携し、初めて患者さんを支えることができます。そのため当院では、医療・介護に携わる方々との勉強会や情報交換会を定期的に開催し、職種の垣根を越えて「顔の見える関係づくり」に取り組んでいます。日頃から意見を交わし、お互いの立場や役割を理解し合うことで、より良い地域医療につなげていければと考えています。三郷で生まれ育った者として、診療だけでなく、こうした活動を通じても地域に貢献していきたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

認知症やがんなど、完治をめざすことが難しい病気もあります。しかし、人生をより良く過ごしていただくためにできることはたくさんあるのです。治療だけで終わるのではなく、その先の生活や人生まで支えられる地域医療を築いていきたいです。地域の皆さんには「こんなことで相談していいのかな」と思わず、気軽に来ていただきたいと思います。それは病気以外のことでも構いません。例えば通学途中に喉が渇いたら、受付に声をかけてください。春にはサクラやモッコウバラが、初夏にはアジサイが咲きますから、花がお好きな方もぜひいらしてください。待合室に置いたグランドピアノを使ってコンサートも開催しています。音楽を楽しみながら健康に関するお話をしたり、一緒に歌を歌っていただきたいです。当院はこれからも地域の皆さんにとって、通うのが楽しみになる場所、元気になれる場所でありたいと思います。

