中迫 博英 院長の独自取材記事
中迫医院
(神戸市灘区/六甲駅)
最終更新日:2026/09/09
阪急神戸本線の六甲駅より徒歩5分の閑静な住宅街にある「中迫医院」。愛知県の医科大学を卒業後、大学病院などの小児科で研鑽を積んだ中迫博英(なかさこ・ひろひで)院長。小児科の開業医であった父の志を受け継ぎ、1989年、生まれ育った神戸・六甲の地に同院を新築開業した。37年にわたり地域医療に尽力し、今では親子2代で通う患者も少なくない。「医師はそんなに偉い存在じゃない」と語る中迫院長が最も大切にするのは、子どもと同じ目の高さで向き合う診察スタイルと、一人ひとりの話にじっくり耳を傾ける誠実さだ。1つの専門に捉われず、病気の予防から高度医療への橋渡しまで担う「身近な相談役」として、地域の健康を見守り続けている。そんな中迫院長に、地域医療への思いや診療方針などについてじっくり聞いた。
(取材日2026年7月24日)
「目」を見て、言葉にできない不調や痛みを察する
小児の患者さんが多くいらっしゃる中で、接する際の心がけを教えてください。

小児科の医師として大切にしているのは、子どもと目線を合わせることです。親御さんに抱かれている子なら椅子の高さを調整し、一人で座っている子なら自分が椅子から降りて目線を同じ高さにします。そうすることで怖がったり身構えたりせず、リラックスして話してもらえるよう努めています。症状をうまく言葉にできない子どもと心を通わせ、状態を正しく把握したいと考えています。また、目の表情は体調を顕著に表すため、診察室での目の様子の観察は非常に重要です。「その子がいかにつらいか」「まだ大丈夫か」を見極める大切な判断材料になります。子どもがうまく言葉にできないSOSをしっかりと受け止められるよう、日々心がけています。
お子さんをお持ちの親御さんに、知っていただきたいことはありますか?
熱がないからといって安心とは限りません。発熱は症状の一つであり、熱がなくても不調が隠れていることがあります。そして、なぜ熱が出るかですが、熱は基本的には病気があるから出ます。ですから解熱したからといって病気が根本的に治ったわけではないことをご理解いただけるといいなと思います。最近の傾向を見ますと、ここ15年で子どもの数が約40%減少している統計が出ているとおり、少子化が進んでいることは当院でも実感します。一方で、最近はお父さんがお子さんを連れて来院されるケースが増えました。家族で子どもの健康や予防への理解を深めてくださるのは非常に素晴らしいことです。一方で、お子さんの急病で普段の様子がわからないお父さんが連れて来られる場合は、体調の経過などの簡単なメモを持参いただけると、診察の参考になります。
予防接種にも注力されているそうですね。

診療は目の前の症状の治療だけでなく、病気の予防も大切な役割です。近年は予防接種の種類が増えており、小児の推奨スケジュールを管理することはかかりつけ医として大切だと考えています。予防接種の時期を逃すと有料になることもありますから、当院では予定表をお渡しし、受診ごとに次の時期を説明してカレンダーへの記入を促します。未接種による重症化を防ぐために、風邪での受診時も母子手帳を確認します。また小児に限らず、中学生のHPVワクチンや成人の帯状疱疹・肺炎球菌ワクチンなど、幅広い世代の予防接種にも注力しています。ワクチンで予防を推奨することは、医師の大切な任務です。
親子2代で通える、地域密着の「相談役」として
開業までのご経歴を教えてください。

小児科の医師として開業していた父の後を、いつか自分も継ぐのだという気持ちで、中学の頃から医師をめざしていました。愛知県の医科大学を卒業してから神戸大学の医学部小児科に入局し、そこで研修医となりました。その後、別の病院で研鑽を積んでいたところ、父が亡くなったんです。まだ自分も若かったので、父の医院を一度閉院し、小児科の医師としての経験をさらに積んでから、父が開業していたこの場所に、1989年に開業することとなりました。
開業当時の先生の気持ちはどのようなものでしたか?
父の医院を閉院してから数年後の開業でしたから、一からのスタートだという気合とプレッシャーでいっぱいでした。まずは、建物を建て直し、新しい医院を造りました。自分の年齢も若かったし、父という存在もすでになくなっていましたから、一人でやっていくんだという勇気が必要でした。自分に何ができるのだろう、という不安と、周囲から慕われていた医師の2代目が開業するというプレッシャーで、最初は怖かったのを覚えています。ただ一生懸命に自分がこれまで学んできた知識と経験をもとにして、患者さんの役に立つ治療が行えるようにと頑張ってきました。
高齢の患者さんも多く来院されるのでしょうか?

はい。当院は小児科だけでなく内科も診療しておりますので、地域のご高齢者にも多く通っていただいています。開業から37年の月日が流れ、昔子どもだった患者さんが「親」となって自分の子どもを連れて戻って来られることもあります。こうして地域の方の成長を見届けられるのは、長年、この地域に根差してきたからこそですから、感慨深いです。昔、自分が幼い時に見た、父が患者さんと楽しそうに話していた昔の記憶と、今自分が患者さんと世間話をしている姿が重なることもあります。開業当初から来てくれている方もまだおられるので、「お互いいい年になりましたね」などと言い合っています。当院は昔ながらの診療スタイルで、来院いただいた患者さんから順番に診ていきます。ウェブ予約などのデジタル対応が難しいご高齢の方でも、安心して通っていただけると思います。
高齢の患者さんと接する際に大切にしていることはありますか?
高齢の患者さんにとって、診察室内のわずかな移動でさえ大きな負担となる場合があります。当院では「医師は座って待つものではない」という思いから、私から患者さんのもとへ歩み寄り、患者さんの体勢に合わせた丁寧な診察を行うようにしています。この患者さんの近くに行くスタイルは、「先代院長と同じスタイルだね、似てきたね」と言われることもあり、とてもうれしいですね。どんな時も話を途中で遮らず、親身に耳を傾ける思いやりと傾聴を大切にしています。併せて気にかけているのは認知症の早期発見です。お体が健康に見えても、ご家族から見て気になる変化があれば気軽にご相談ください。神戸市は認知症に特化した専門医療機関が充実しており、適切な連携・ご紹介が可能です。
親や家族の「直感」を、受診の決め手に
必要に応じた医療連携についてお聞かせください。

かかりつけ医の役割は、一つの専門に偏らず体全体の不調を幅広く診るプライマリケアにあります。日頃から患者さんと深く関わることで、病気の「早期発見」が可能になると考えます。近年の内科領域は専門化が進んでいますが、当院では自らの範囲に固執して抱え込むことはいたしません。各分野の専門家と密に連携しており、必要なタイミングで迅速に「専門家へのバトン」をお渡しできます。病状に合わせたきめ細かなご紹介を大切にしています。小児の患者さんに対してもより高度な治療が必要な場合は、総合病院を含めて迅速にご紹介します。なお、六甲道駅近くには小児内分泌を専門とする私の息子が小児クリニックを開業しているため、そちらとも連携しています。
話は変わりますが休日はどのように過ごされていますか?
休日はカメラを持って神社巡りや散策、草野球などを楽しんでいます。長年続けているガーデニングも趣味の1つで、医院のエントランスにはバラやジャスミンを飾っています。診察室の大きなガラス窓から見える中庭では、春の200本のチューリップをはじめ、初夏の紫蘭、夏のムクゲと、季節ごとに美しい花々が咲き誇ります。待合室には季節の植物や、神社巡りなどで撮影した写真を展示しています。患者さんとそうした写真をきっかけにお話しする時間も、私の大きな楽しみとなっています。
読者へのメッセージをお願いします。

いつもお子さんと一緒にいる親御さんの「いつもと違う」という直感を信じてください。お子さんの不調は熱の有無だけがすべてではありません。少しでも違和感があればお早目に受診してください。何もなかったらなかったで安心できるわけですから。予約制ではないため気軽に受診いただければと思いますが、発熱症状がある方は院内の感染対策のため来院前にお電話をいただくようにお願いいたします。また、当院は来年から電子カルテが導入されます。セキュリティーを徹底してまいりますので、安心して受診してください。

